糖尿病でもチーズを食べても良い理由
糖尿病の初期症状の患者さんや、予備軍と診断された方が血糖コントロールを行うためには、バランスの良い食事が必要不可欠。
糖質だけを制限すれば血糖値が正常に戻るというわけではなく、食生活から栄養の偏りが発生しないように注意しなければなりません。
糖尿病の療法食には制限が多いイメージがありますが、意外にもチーズは血糖値を上げにくい食材として知られています。
チーズは血糖値を急上昇させる糖質が控えめな食品で、特に加工済みのプロセスチーズは他のチーズよりも糖質が少ないため、療法食にも適しています。
脂質や塩分が含まれている点に注意すれば、チーズは貴重なたんぱく源として、毎日の食事に加えることができます。[1]
たんぱく質や脂質を十分に摂ることで、消化管ホルモンであるインクレチンが分泌され、すい臓にインスリン分泌の準備を促し、食後の血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。
インクレチンが分泌されないまま糖質を摂ると、食後の血糖値が急激に上昇するため、血糖コントロールのバランスを乱してしまいます。[2]
チーズは「動物性食品」に分類されるため、たくさん食べると脂質や塩分の摂りすぎになってしまいます。
初期症状も含め、糖尿病の患者さんや予備軍の方は、血糖値だけでなく高血圧や高脂血症などにも注意しなければなりません。
基本的には炭水化物の量は控え、野菜をたっぷりと摂りながら、不足しがちなたんぱく質については、良質なプロセスチーズなどを加えて補うなど工夫をして食べるようにしましょう。
ただし、糖尿病腎症を発症している方や、腎症のリスクのある方はたんぱく質の摂取を調節しなければならないため、医師や栄養士に確認のうえ、適正量を設定してからメニューに加えるようにしてください。
チーズが血糖値を下げる
糖尿病の療法食において意識しておきたいポイントとして、「低インスリン」「低GI」という目安が挙げられます。
GI値は「グリセミック指数」と呼ばれ、炭水化物が糖に変換されるまでのスピードを表した数値です。この数値が高ければ、体の中でスピーディに糖に変換されるため、血糖値の急上昇に繋がります。
それに対して、血糖値に影響を与えにくいものが低GI値の食品です。低GI値の食品を使ったメニューは、糖尿病の食事療法を進めるうえでもとても役立ちます。
チーズ類は乳製品の中でもGI値が低く、低GI食の中に加えることができます。同じ乳製品でも、低GI値の食事を摂るほうが食後血糖値の上昇が抑えられるため、インスリンの分泌が低く抑えられます。[1]
チーズは「血糖値を下げる」というよりも、「血糖値を急激に上昇させない」食品です。
たくさん食べたからといって血糖値が下がるわけではなく、あくまでも血糖コントロールのための食品の一つと考えるのが良いでしょう。[1]
また、糖尿病を改善するためには、インスリンを過剰に分泌させないような食事が理想的といわれています。
血糖の上昇に応じてインスリンが分泌されるほどに肥満へと繋がるため、チーズをはじめとする低GI値の食品は糖尿病対策や肥満の解消にも役立ちます。
低GIとはいえ食べすぎには注意が必要ですが、血糖値を急激に上げない食事習慣が定着すれば、血糖値の上がりすぎを抑えることができます。
良質なたんぱく質をメニューに加えることで、炭水化物に依存しすぎず、野菜ばかりを口にすることで食事制限が面倒になってしまうようなマンネリも防ぐことができますね。
各種チーズの糖質量
糖質制限ダイエットにも使われているチーズは、たんぱく質を含む食材として、糖尿病の療法食にも適しています。
間食に油ものや炭水化物を摂るよりも、チーズを摂るほうが、体に不足しがちなたんぱく質を補うことができます。[1]
チーズにはさまざまな種類がありますが、可食部100gあたりの糖質量としてクリームチーズが2.3g、カッテージチーズが1.9gとなり、エメンタールチーズが1.6gとなっています。
ゴーダチーズ・チェダーチーズはいずれも1.4g、カマンベールチーズは0.9gほどしか含まれていません。
雪印メグミルクから販売されている「さけるチーズ」はプロセスチーズに分類され、こちらも1本25gあたり0.2~0.7gとごくわずか。100gにしても1.3g程度です。[3]
チーズは全体的に糖分が少ない食品なので、甘いものの代わりにチーズを摂る、もしくは食事の副菜としてチーズを加えるなどの方法で糖質制限をしながら、血糖をコントロールすることもできますね。
また、チーズは炭水化物が体の中で糖に変換されるスピードを示す「GI」の値が低い食品としても知られており、糖質制限をしている人にとってはとても有効な食品の一つとなっています。[1]
このように、糖質についてはほぼ問題のないチーズですが、かわりに塩分量には要注意。
チーズをおやつや食事がわりに食べすぎると、今度は塩分が過剰となり、高血圧症の原因となってしまいます。
たとえば、チーズ100gあたりに含まれる食塩は3gと高く、一日の食塩の摂取目安量である6gの半分近くも占めてしまいます。[4]
チーズの種類や含まれている糖質の量だけでなく、食べる量にも注意が必要です。
おすすめのチーズレシピ
チーズを食事に取り入れたいけれど、そのまま食べるだけでは味に飽きてしまうものです。こちらでは、チーズを用いたレシピをご紹介。チーズは、さまざまな料理によく合う食材なので、ぜひいろいろ試してみてくださいね。
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レシピその1:チーズと野菜のパン粉焼き
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ブロッコリー…30g
まいたけ…20g
赤パプリカ…15g
塩…0.5g
(A)
乾燥パン粉…大さじ2/3
感想パセリか生パセリのみじん切り…少々
粉チーズ…小さじ1/2
オリーブオイル…小さじ3/4
<作り方>
1.ブロッコリーを小さな房に分け、まいたけをほぐす。赤パプリカはお好みのサイズで、食べやすい大きさにカット
2.耐熱容器に(1)でカットした材料を並べて塩をかけ、(A)の材料をすべて混ぜ合わせて振る
3.(2)をオーブントースターで8~10分ほど焼いて完成
お手軽に野菜を頂きたいときにおすすめのパン粉焼き。ブロッコリーや赤パプリカなど、色鮮やかな野菜にパン粉をまぶして、こんがりと焼いた一品です。野菜が持つ自然の甘みを引き出し、塩分の物足りなさをチーズがカバーしてくれます。
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レシピその2:ナスと豆腐のグラタン
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絹ごし豆腐…1/2丁
ナス(小)…1本
トマト缶(ピューレ)かカットトマト缶…100g
ケチャップ…小さじ1
水…小さじ2
チーズ(ピザ用)…60g
ミニトマト…2個
乾燥パセリ…1g
<作り方>
1.ナスを5mm幅ほどの厚さになるようななめに切る
2.耐熱皿にナスを並べて水をかけ、軽くラップをしてレンジ(500W)で1分ほど加熱。なすがしんなりとしてきたころに取り出す
3.豆腐を半分~三等分に切り、5mmほどの厚さにカットする
4.ミニトマトはヘタを取り、3~4等分する
5.トマト缶とケチャップを混ぜ合わせ、耐熱皿に半分だけ入れてまんべんなく伸ばす
6.(5)の上に、ナスと豆腐を重ねるように交互に並べる
7.上から(5)をまんべんなくかけて、チーズとミニトマトを載せる
8.(7)をトースターで焼く。チーズに焼き色がついたら取り出し、乾燥パセリを振りかけて完成
ナスとチーズが美味しい、ヘルシーなグラタンです。絹ごし豆腐が満腹感を誘い、一皿でも満足のいく仕上がりに。チーズの塩気が食欲をそそります。
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レシピその3:チーズスフレ
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クリームチーズ…100g
卵…2個
砂糖…大さじ1+2/3(15g)
甘味料(0カロリー砂糖)…大さじ1+2/3(15g)
レモン皮…1/2個分
レモン汁…1/2個分(15g)
バニラエッセンス…1~2滴
いちご(小サイズ)…6個
ケーキ型(15cm)…1個
<作り方>
1.オーブンを160度で予熱しておく
2.レモンの皮をすりおりして、レモンの果汁を絞る
3.砂糖と甘味料を混ぜ合わせる
4.卵を卵白と卵黄に分ける
5.ボウルにクリームチーズと卵黄を入れ、滑らかになるまで混ぜる
6.(5)にバニラエッセンス、(2)のレモン皮・果汁を入れて混ぜる
7.卵白に(3)の砂糖を少しずつ加えながら、ハンドミキサーで混ぜてメレンゲを作る
8.(6)にメレンゲを半分ずついれ、外側から内側へと軽く混ぜ込む。メレンゲを潰さないようにし、混ぜるのは6回程度でOK
9.ケーキ型に(8)で作った生地を流し込み、表面をヘラで平らに整える
10.(9)を予熱したオーブンに入れ、160度で20~30分焼く。さらに盛り、イチゴを添えれば完成
砂糖と0カロリーの甘味料を半分ずつ使い、レモンをたっぷりと使った、さわやかでほんのり甘いチーズスフレ。あつあつのものをすぐに食べても、冷やしてから食べても美味しい食後のデザートです。
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まとめ
チーズは糖質の含有量が少なく、低GI食品としても知られており、バランスの良い食生活をサポートしてくれます。
塩分や脂質の摂りすぎに注意をすれば、毎日の食卓に加えたりおやつがわりにしたりと、うまく活用することができますし、それらの工夫が血糖コントロールにも役立ちます。
糖尿病だからといって食べられる食品がごくわずかに限られるわけではなく、糖質の量やGI値の低いものを中心に組み合わせていけば、無理なく血糖値の管理ができるようになりますよ。
食べ方だけではなく、栄養にも気を付けよう

糖尿病の療法食には糖質制限がつきものですが、チーズなどを活用してバランスの良い食事を心がけることや、2食から3食を規則正しく食べることも、血糖値の管理に役立ちます。
食事については、カロリーオフや糖質オフなど、摂取量を減らす方向に目が向きがちですが、糖尿病に効果が期待できる成分を意識的に摂っていくことも予防方法の一つ。 一例として「酵素」や「サポニン」など、糖尿病に効果があるとして研究されている成分にも注目し、体に必要な栄養素を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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