腎臓に優しい食事

腎臓に優しい食事

糖尿病と腎臓病の関係性

こちらでは、糖尿病と腎臓病の関係と腎臓に優しい食事について解説しています。
糖尿病性腎症は、人工透析が必要になる第4~5期までほとんど自覚症状が現れないので、発見が遅れてしまうことも。透析治療に至らなくても、心臓や脳の血管の病気が高い頻度で起きてしまうのが糖尿病性腎症の怖いところです。

糖尿病性腎症(慢性腎臓病)
とは?

糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症のひとつ。糖尿病が引き金となって、腎臓の機能が少しずつ低下する病気です。糖尿病になると血液中の糖分が高くなるため血管が傷つきやすく、その傷をふさぐために血管が固くなってしまいます。そのため、ゆっくりと時間をかけて全身の動脈硬化が進んでしまうのです。腎臓の血管も例外ではなく、糖尿病による動脈硬化で機能が低下します。
腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄する臓器です。腎症が進行すると腎不全になり、血液中の老廃物を排出できなくなって尿毒症になってしまいます。尿毒症を防ぐためには、血液を人工的にろ過する血液透析療法を行わなくてはなりません。

糖尿病の合併症・糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症の食事療法ではどんなことをするの?

  • 1たんぱく質の制限
    糖尿病性腎症になると、たんぱく質の摂取を制限する必要があります。
    余分なたんぱく質は尿素やクレアチニンなどの老廃物となり、腎臓でろ過されて尿中に排泄されるため、たんぱく質を摂り過ぎてしまうと腎臓の負担が大きくなってしまうのです。腎臓の負担をできるだけ軽くして腎機能を保ち、腎不全になるのを防ぐためには、たんぱく質の制限が欠かせません。
  • 2塩分・カリウムを制限
    腎症が起きると血液内の老廃物をうまく排出できないため体に塩分が溜まり、血圧が上昇しやすくなります。高血圧は腎症の進行させる原因になるので、糖尿病性腎症の治療においては塩分の摂取も控えなければいけません。また、腎症になるとカリウムを尿へ排出する機能も低下します。カリウムが多過ぎると、心拍数が増加する頻脈(ひんみゃく)や心不全の原因となるため、カリウムの摂り過ぎにも十分に注意しましょう。
  • 3炭水化物・脂質を増やす
    糖尿病性腎症になるとたんぱく質を減らさなくてはなりませんが、たんぱく質の摂取を落とすだけでは、生きていくのに必要なエネルギーを確保できなくなります。たんぱく質を減らした分は、炭水化物や脂質など、体のエネルギーとなるものを増やして補う必要があるのです。
    そもそもたんぱく質は、血液や筋肉を作る役割があります。ヒトの体は活動のためのエネルギー補給を第一に考えるため、炭水化物・脂質などのエネルギーが十分に補給されないと、本来は血液や筋肉を作るはずだったたんぱく質がエネルギーに変換されてしまいます。エネルギーに変換されると同時に老廃物が排出されてしまうので、ますます腎臓に負担がかかる原因となるのです。
    そのため、たんぱく質を減らす一方で、炭水化物・脂質を十分に摂らなくてはいけません。炭水化物と脂質を増やすことでたんぱく質は効率的に活用され、腎臓に余計な負担がかからなります。
    もしも炭水化物・脂質を増やした結果、血糖値がコントロールできなくなる場合は、炭水化物・脂質の量はそのままに、薬物療法などを用いてコントロールします。

5段階別で変わる
食事療法

1期:腎症前期

この段階ではまったく自覚症状はありません。ですが、「尿中微量アルブミン」の検査を行うことで腎症を患っているかどうかは分かります。尿にアルブミンが30mg/日(mg/gCr)以上含まれていれば陽性です。
ただ、微量アルブミン尿だからといって必ずしも糖尿病性腎症とは限りません。糖尿病を長く患い、すでに神経症や網膜症などを発症している場合、微量アルブミン尿やたんぱく尿が現れたら高い確率で糖尿病性の腎症です。ですが、合併症がない、あるいは血尿を伴う場合は別の要因が考えられるため、腎生検をしてより正確な診断を行います。

総エネルギー (kcal/kg/日) 25~30
たんぱく質 (g/kg/日) 摂取エネルギーの20%以下
食塩 (g/日) 6g未満(高血圧の場合)
カリウム (g/日) 制限なし

第1期は比較的症状が軽く、適切な処置を施せば腎臓の機能が回復する可能性もあります。

主に糖尿病食を基本とし、血糖コントロールに努める段階です。腎臓の負担を軽くするためにも、特にたんぱく質の過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。

腎症前期の食事療法について詳しく見る

2期:早期腎症期

2期に突入すると、本格的に薬物療法がおこなわれます。依然としてたんぱく尿ではあるものの、自覚症状はほとんどありません。人によっては血圧が上がり始めるので、第2期の段階でしっかりと血糖値をコントロールできれば、糖尿病性腎症の悪化を防げます。第3期に突入してしまうと、腎症の進行を遅らせることはできても、腎臓の状態を改善させるのは難しいので、この段階で糖尿病性腎症を発見できるかどうかが非常に重要です。

総エネルギー (kcal/kg/日) 25~30
たんぱく質 (g/kg/日) 摂取エネルギーの20%以下
食塩 (g/日) 6g未満(高血圧の場合)
カリウム (g/日) 制限なし

腎症2期では糖尿病食を基本とし、しっかりと血糖コントロールを行っていきます。

血圧が上昇しやすくなるため、降圧治療も欠かせません。第1期と同じくたんぱく質の過剰摂取は避け、摂取エネルギーの20%以下になるよう調整しましょう。

早期腎症期の食事療法について詳しく見る

3期:顕性腎症期

この段階から、むくみ・息切れ・食欲不振・満腹感などの自覚症状が現れはじめます。ますます腎臓機能が低下するため尿中のアルブミン量が増え、高血圧が進行することで動脈硬化になることも。第3期では、低塩分・低たんぱくの食事療法に加えて、運動療法による血糖値・血圧コントロールも重要です。

総エネルギー (kcal/kg/日) 25~30
たんぱく質 (g/kg/日) 0.8~1.0
食塩 (g/日) 6g未満
カリウム (g/日) 制限なし(高カリウム血症の場合は2g未満)

血糖コントロールを厳格に行い、降圧治療も引き続き進めていきます。この段階になるといよいよたんぱく質の摂取量をグンと下げる必要があるため、MFSタンパク制限食に切り替えるなどして対処します。

顕性腎症期の食事療法について詳しく見る

4期:腎不全期

「腎不全」の状態と判断されたら第4期と診断されます。たんぱく尿、高血圧、むくみ・貧血など、尿毒症の症状が大きく現れはじめ、心不全の危険性も高くなります。この段階になると、腎症を改善するのは難しいため、腎症の進行を防ぐことに注力します。主治医の先生としっかり相談して生活習慣を改善し、糖尿病性腎症を悪化させないための食事療法を行いましょう。

総エネルギー (kcal/kg/日) 25~35
たんぱく質 (g/kg/日) 0.6~0.8
食塩 (g/日) 6g未満
カリウム (g/日) 1.5g未満

今まで通り厳格な血糖コントロール・降圧治療と低タンパク食を続けます。症状が悪化している場合は、第4期から透析療法を導入します。

腎不全期の食事療法について詳しく見る

5期:透析療法期

第5期になると、本格的な透析治療に入ります。糖尿病性腎症が原因で透析を受ける人は、全透析患者のうち44.1%(2012年現在)ともっとも多いのが現状です。糖尿病性腎症に、命にかかわるほどの重たい自覚症状がほとんど現れないことも、早期発見を遅らせている原因です。

総エネルギー (kcal/kg/日) 透析の内容に合わせて食事療法を行います。
たんぱく質 (g/kg/日)
食塩 (g/日)
カリウム (g/日)

血糖コントロールと降圧治療を行いつつ、透析療法を行います。場合によっては、腎移植を行うこともあります。透析間体重増加率は、透析時基本体重の5%以内に抑える必要があるので、水分も制限する必要があります。

腎臓に優しい食事のコツ

糖尿病性腎症の治療には、症状の進行に合わせた食事療法・運動療法を主に行います。薬物療法も行いますが、基本的には食生活の見直しと適度な運動が大切です。

初期段階であれば、特に血糖値と血圧をいかにコントロールできるかが重要。

糖尿病性腎症は、症状が悪化すると最終的に人工透析が必要になる病気ですが、早めに対策をとれば症状の悪化を防ぐことが可能です。

塩分の摂りすぎに注意

食生活では、塩分を減らすことが腎臓を守るために必要です。加工食品は一般に塩分多めに作られているので、まずは加工食品を減らすことが大切です。

漬物は控え目にする、しょうゆをポン酢に替えるなどして、徐々に塩分を減らしていきましょう。味が物足りないという場合は、食酢や柑橘類などの酸味や香辛料を組み合わせてみても良いですね。

食塩は一品に集中して使い、あとは無塩で献立にメリハリをつけることで、塩分を抑えた腎臓に優しい食事になります。

たんぱく質の摂り方に注意

低たんぱく・高エネルギーの食事にする

たんぱく質を減らしつつ、生命活動に必要なエネルギーを得るために、低たんぱくで高カロリーな食事を摂るのがおすすめです。

脂身の多い肉や魚、油を使う炒め物・揚げ物といった料理を作ることで、たんぱく質を抑えながらも高カロリーな食事になります。粉あめやMCTなど、糖尿病治療用の食品も販売されているので、うまく活用しましょう。

低たんぱくで高エネルギーの食品を記録しておき、エネルギーが足りないときの参考にすると良いでしょう。たとえば、フライドポテト、カレー、大学芋、果物のコンポートなども低たんぱく・高エネルギーな食品です。

たんぱく質の減らし方

たんぱく質を多く取ると、クレアチニンや尿素などの老廃物が増加。これらは腎臓だけしか排出できないため、たんぱく質を多く取ると腎臓に大きな負担をかけてしまいます。

主菜以外にはたんぱく質系の食材は使わないようにすると、想定外の食べすぎを防ぎやすいですよ。

また、野菜・海藻類・きのこ類を使うことでボリュームが増し、食事の満足感が得られます。ただし、昆布やワカメなどカリウムが豊富に含まれている食材もあるので、カリウム制限がある場合は注意が必要です。

良質なたんぱく質を摂る

単にたんぱく質を減らすだけではなく、良質な動物性たんぱく質を摂るようにしましょう。動物性たんぱく質が60~70%になるように調整するのが理想です。

低たんぱくご飯、低たんぱくパンなどの特殊食品を主食にするのもおすすめ。

酒食を低たんぱくの食品に変えると、その分おかずでたんぱく質を補えます。主菜だとパンやご飯よりも良質な動物性たんぱく質を摂りやすいのでおすすめです。

食べ方だけではなく、栄養にも気を付けよう

食生活では、指定されたエネルギー摂取量の中で、必要な栄養素をまんべんなく摂ることが大事です。

多すぎても少なすぎてもいけません。不足しがちな成分はサプリメントなどで補い、しっかりと栄養バランスを整えましょう。

参考:4.糖尿病性腎症|一般社団法人 全国腎臓病協議会